吉田太郎さん(フリージャーナリスト)から推薦メッセージをいただきました!
- daichikurashi

- 2025年11月21日
- 読了時間: 3分
更新日:2025年12月1日
「本書をお薦めします。
大地をオブラートのように薄く覆うわずか30㎝ほどの土壌圏。これが、私たちを含めた「いのち」のすべての源だ。だから、土の大切さはわかる。けれども、いざ詳しく知りたいと思っても専門用語の羅列に身が引けるし、専門書を何冊読んでも断片的な知識が増えるだけで、そのつながりがみえない。けれども、仮に次のような説明されたらどうだろう。
「食べものがなくても水さえあれば2カ月は餓死しない。けれども、息ができなければ数分で死ぬ。どれも大切だが、緊急度から言えば、空気、水、栄養の順だ。同じことが植物にもいえる。なのに、農業は肥料ばかりを重んじて空気や水のこと忘れがち。土が締め固められてフカフカでなくなれば、呼吸も浅く健康になれない。だから、いくら栄養を取っても薬が必要になってくる」。
ニコール・マスターズさんのこの本は日本語の「生きがい」の説明から始まり、「呼吸する大地」「いのちの水」「多肥料投入型農業の行き詰まり」となぜ微生物や虫と共生したフカフカな土が必要なのかをわかりやすく説いていく。
この本の楽しさはそれにとどまらない。面白い本の魅力のひとつには他の類書では得られない情報が得られることがあるが、ヒトが土と共に生きてきたことの説明として「サメは100万分の1の血の匂いを嗅ぐことができるが、人間の鼻は、サメが血の臭いを嗅ぎとる感覚より20万倍も放線菌がだす土の香りに敏感なのだ」とか、肥料をやらなくても森の樹が元気に育つ理由として「昆虫は、あらゆる生態系で“窒素泥棒”として振る舞う。だから、森林生態系では、土壌に還元される窒素の70%が虫の死骸やその糞によるものだ」とか「へぇ、そうなのか」と読みながら思わず膝を叩きたくなるような知見が随所にちりばめられている。
また、ここで書いたとおり、科学的な知見をきちんと説明しようとすれば「放線菌」といった専門用語が使われることは避けえない。評者も原書を農業英語の専門辞書や理化学辞典を片手に苦労して読んだ。けれども、この翻訳書の巻末には日本版オリジナルコンテンツの「キーワード&キーパーソン」を収録されているし、ツボを押さえた「訳注」や原書をバージョンアップした腐植の説明図をさりげなく添えることで、読者が中断することなく読み進められる工夫が凝らされている。
そして、この本の最大の魅力は、ニコール博士の幅広い知見が現場で活かせることを各章で登場する農家の実践例とともに躍動感をもって描かれていることだろう。気候変動による猛暑や猛烈な速度で失われる生物の多様性と表土。真実を知れば知るほど絶望的な未来を目をつぶりたくなるが、二酸化炭素の削減以上に水循環の回復の方が気候変動対策としては重要なこと。微生物同士が「クオラムセンシング」によって対話していて、こうした自然のカラクリを上手く生かせば、失われた土壌も1年に1㎝という奇跡的な速度で回復できること等、最先端の知見も織り込み済みだ。この本を読むことで、知的好奇心が満たされるだけでなく、レイモンド・エップさんのような農家が増えれば、どんな未来絵図が描けるか。そんな希望も受け取ることができるだろう。」
吉田太郎(フリージャーナリスト、『シン・オーガニック』及び『社会実装するオーガニック』著者)
>>特設ページはこちら
>>ご注文はこちら
























コメント