top of page

Blog:大地X暮らし研究所

ローカリゼーションの6月 (その2)

執筆者の写真: 信一 辻信一 辻

夏至の世界ローカリゼーションデイを頂点とするローカリゼーション月間。今年も日本では6月12日にローカリゼーションデイJAPANをオンラインで開催する。

>>申込みはこちら(参加費無料&要事前登録)

>>世界ローカリゼーションデイに登録されている国際的な潮流の最新情報はこちら(英語)

そこへ向けてぜひ読んでおいていただきたい記事がある。「トゥルースアウト」という雑誌に載った、ヘレナとローカルフューチャーズの仲間たちによるものだ。今日はその後半。


”Supply Chain Failures Prove Growing Need for Localized Economies”

by Helena Norberg-Hodge, Steven Gorelick and Henry Coleman


in TRUTHOUT, May 22, 2022


(前回の続き)

また、メディアではあまりとり上げられていないが、世界各地で、グローバル企業への依存から脱して地域に根ざしたコミュニティ・ビジネスへとシフトする試みが、さまざまなすばらしい効果をもたらしている。こうしたローカリゼーションの運動は、すべての大陸でグローバルに展開されているのだ


一般市民は、食糧危機の到来に備えて、食をはじめとする基本的なニーズの地域自給率を上げるために動き始めている。コロナウイルスの流行が始まったとき、オーストラリアのメルボルンからメキシコシティまで、小規模農家は、数週間で倍増した需要に対応するために生産量を上げることができた。これは、グローバルな危機に直面したときに、大企業より地域の農場やビジネスの方が、ずっと高い弾力性を備えていて、コミュニティのニーズにもはるかに柔軟に対応できることを証明してくれた。私たちは多くの情報源から聞いて知っている。こうした農家は、あの危機の中で、より懸命に働き、より多くの人を雇用しなければならなかったにもかかわらず、作物の値段を上げることはなかった、と。


こうした地域の新しい相互扶助ネットワークは、世界中で展開されているローカリゼーション運動の一面を表しているに過ぎない。これも主要なメディアではあまりとり上げられないことだが、気候変動に対しても、強まる大企業による支配に対しても、深刻化するメンタルヘルスの問題に対しても、ローカリゼーションによって立ち向かおうという気運が高まっている。


すべての大陸で成長しているのがローカルフード運動だ。米国では過去20年間にファーマーズ・マーケットの数が4倍になったが、地域の食料主権を求める運動は、今や世界最大の社会運動の一つとなり、2億世帯以上の小規模農家を参加している。


小規模で生物多様性に富んだ生産を基本とするローカルフード・システムは、温室効果ガスの排出を劇的に削減するだけでなく、実際に土壌を再生させることができる。アメリカのロデール研究所の研究によると、すべての耕作地と牧草地でこのようなやり方に移行すれば、土壌を再生し、現在のCO2排出量の100%以上を地中に吸収することができるという。しかもそれは生産量の減少を意味しない。小規模農家では、工業的な単一栽培農地に比べて、1エーカーあたり最大5倍もの食料が生産されるのだ。


さらに、これまでのグローバルな依存関係の代わりに、ローカルで相互依存的な関係を軸に経済を再編成することによって、地域コミュニティの暮らしと経済は大きく向上する。例えば、2021年に英国で行われた調査によると、地元の食品販売店はチェーンのスーパーマーケットに比べ、同じ量の食品を販売することで3倍の雇用を生み出していることが明らかになった。


ローカリゼーションの利点は、食料以外の分野についてもいえる。独立系書店と大手チェーン系の書店とを比較したある事例研究では、前者で支払われたお金は、後者で支払われたお金の3倍も地域経済圏の中に残り、その結果、雇用効果、所得効果、地方自治体への税収もまた3倍となった。また、別の調査では、地元企業が占める小売スペース1平方フィートあたり、大手チェーン店に比べて70%以上多くの地域経済効果を生み出すことが示されている。


一方、インドの農村部の一部では、地域政府が地元の工芸品を中心とするローカル経済を